雪の世界のキタキツネ、そして眠りから醒める時

こんにちは。天海和美です。
昨日はようやく久々に大自然の中にいくことが出来ました。
誰も人がいない風景の中で車を走らせて雪の世界、光の世界を楽しんでいました。
しばらく山の中を走っているとまるでそこは時間が止まったかのような異次元の世界があって。
そして私の中で不思議な出会があった。
山の中の何も無い雪原でキタキツネに出会った。
まるでこの星に来てだーれも会っていないのに、初めて生き物に出会ったみたいな気がした。
私は彼の姿に少し驚きと興味を持って立ち止って見てた。いつもはすぐに逃げるはずのキタキツネがじ〜っと動かずにそこにいた。
私「どうしたの?」と心の中で言った。
キタキツネ「別に、、なんでも無いよ」と言った。
私「でも、なんかあったんでしょ?」
キタキツネ「別に、、、。大した事ないさ。
大丈夫、大した事ない。大概のことは、なんだって大したことなんか無いのさ。そう思わないかい?」とそう言った。
私はそうだと思ったけれど黙っていた。
キタキツネはじっと動かずにそこにいた。
それからだいぶ経ってからキタキツネはゆっくりと立ち上がり、向きを変えて少しずつゆっくりと上の方へと歩いて行った。
だ〜れも足跡を付けていない真っ白な雪の上にポツン、ポツンと自分の歩いた足跡を残しながら。
そして山のてんぺんまで行くと振り返り私を見下ろしながら。
キタキツネは私に向かってもう一度言った。
「人生でね、起こることなんて何だって大したことなんか無いんだよ。
別に仰々しく考えることなんか無いさ。
みんなこの星で見ることは夢の中のことだからね。
みんなこの星に来て色んなものに姿を変えて、ほんのひと時、居るけれど
それは本当に一瞬だよ。みんな旅人なんだ。
そして、ここから去ったら夢から目を醒ますんだ。
そしてまた“僕”に戻るってわけさ」
キタキツネは山の上から私を見下ろしながらそう言った。
そうか、、、キタキツネはもうそろそろ夢から醒める時なんだな、、、、。
それを悟ったんだと私は思った。
キタキツネはどこで負ったのか、怪我をしている右足を引き摺りながら去って行った。
北海道の冬は寒い。その寒さだけでも生き物たちは冬を越せないものもいる。
怪我をしていたら獲物を獲ることはまず無理だろう。
それが自然界だから。
冬の冷たい雪の精が彼を迎えにきてくれるのだろう。
そしてキタキツネは眠りから目を醒ます。