どうしてクマが現れるのか?クマ対策に必要なこと

こんにちは。天海 和美です。

昨日山奥を歩いてきましたという投稿をしましたが。
今日はちょっと別のことです。

昨日、ヒグマの痕跡について投稿しましたがここ数日、ツキノワグマ(クロクマ)のニュースを何件も目にしました。富山県や秋田県などクマが出てきて人を襲って死亡事故も起きています。全国的にクマ出没のニュースが出ています。

今年は猛暑や雨不足で山に異変が起きて餌がないのでは無いか?と思います。全国の山を調べたわけでは無いのですが、野菜も猛暑でダメになって悲鳴を上げている熟練農家さんもたくさんいるのですから山の実りが悪くても当然かと思うのです。

昨日山奥を歩いていてミズナラの巨木、エゾマツの巨木、エゾアカマツの巨木などたくさん見ましたが一度もどんぐりや松ぼっくりも見ませんでした。

キハダも巨木を何本も見ましたが実を付けていなかったし、ヤマブドウもコクワ(野生のキーウィみたいな)のも全く実を付けていませんでした。

ヒグマは冬眠する前にたくさんの食べ物を摂って脂肪を蓄えないと冬眠出来ないのです。
鮭を咥えたヒグマの木彫りは北海道のお土産品で昔よくありましたが、鮭を食べられるのは海辺のヒグマだけです。

本当は内陸部のヒグマも鮭をかつては食べていたと思いますが今は河口付近で鮭は一網打尽に捕らえられお腹を裂かれて人工授精して孵化場で稚魚になり、放流されます。
だから山奥に棲むヒグマは鮭が食べられなくなりました。

山奥のヒグマたちは木の実や山菜、草の根っこ、スズメバチの巣や蜜を食べています。ですから森に木の実が無いとヒグマたちは飢えてしまうのです。秋は一年で一番食べなければ生存に関わるから。熊だって生きているし可愛い子どももいるのです。
先週、友だちと会った時に「昨日、ヒグマに会ったんだよ。あんなの初めて見た」と言っていました。その友だちはよくクマを見るのです。
でも昨日見たのは、、、母グマと子どもが2匹。仕事で摩周湖の下辺りの林道を車で走っていたら坂の登り切った所でヒグマのお母さんと子グマ2匹がじゃれあって遊んでいたそうです。

「あんな姿初めて見た、、、」と言っていました。いつもヒグマを見る時は大体はチラリと見るとか森の中の熊笹の影にいるとかそんな感じだけど、今回は「ヒグマの日常風景」だったから。
友だちはなんだか”心を打たれた”ようでした。

私たちはニュースや新聞などでクマのことを聞く時はほぼ「恐ろしい」内容しか聞きません。良いことなんて動物園の人気者のクマの話が500回に1回もあるでしょうか?

だからクマが出た=襲われる=早く殺せ!というふうになっています。

でも、実はクマがいなくなったら私たち人間も生きられなくなるかも知れません。それは大袈裟なことでは無くて、本当に大きな影響があると思います。

クマは体も大きく、力もあります。アイヌ民族はヒグマは最高神の化身で肉を纏ってこの世界に現れていると伝えられてきました。
つまりクマは仮の姿で神であると崇めていたのです。
だから里に降りてきたヒグマは狩をしてその肉はいただくが、魂を天上界に還す儀式をしていました。それがイオマンテと言われる儀式でした。
アイヌの人たちはヒグマが森を作っていることを知っていたから最高神としていたのだと思います。これは伝説の話では無くて。

ヒグマは鮭を獲って食べますが食べるのは一部だけで大方残します。あの巨大な鮭を獲れるのは大きな体のヒグマしかいないでしょう。残した鮭はキツネが食べ、タヌキが食べ、カラスが食べ、オオワシやオジロワシが食べ、小さな鳥たちが食べ、ネズミが食べ、虫たちが食べ、微生物が分解し土に還します。

そのヒグマの獲った鮭で森が栄養を得ます。魚にはチッ素、リン酸、カリウムがたくさんあるので有機栽培でも肥料として魚カスを畑に入れたりします。
それによって木が育ち、山菜が育ち、木の子が出来、薬草も生えます。

木が育つことで私たちの生活は支えられています。一番は水を作ってくれること。森は自然のダムです。雪が降って溶けることで水を土中深く染み込ませ地下水を作ってくれます。雨も水を供給しますが雪の方が長く留まってくれます。それをずっと貯めておいて地下深く浸透させてくれるのが森なのです。

農業もこの山からの水が無ければお米も野菜も作れないのです。そしてもちろん私たちが飲んでいる水もです。森があることで私たちは生かされているのです。
そして森は私たちの吸う酸素を供給してくれています。森の中で森林浴をすると呼吸がゆったりとして脈拍もゆっくりと安定します。

森にはたくさんの薬草があって世界中の医薬品の6割以上が今も植物由来で作られているのです。
そして森は木を供給し、家を作ったり、紙の原料になり、毎日使うトイレットペーパーさえも木から作られています。
その大切な木、森を作っているのはクマたちの役割がとても大きいのです。

先日、矢野智徳さんの大地再生ワークショップで猪や鹿が掘る穴について話がありました。
猪が掘る穴はそこが土が固くなって詰まっている所だから掘ってくれていると。
その掘り方を学んで矢野智徳さんは大地再生の水脈を通す溝を掘っているそうです。

私はアラスカの山奥で毎年、滞在中毎日ツンドラの大地に出掛けネイチャーガイドから色んなレクチャーを受けていました。そのネイチャーガイドたちは植物学や地質学、野生動物や環境学といった博士号を持つ人たちでした。(アメリカのネイチャーガイドは国家資格なので保安官よりステイタスは上だそうです)
で彼らがグリズリーやブラウンベア(ヒグマ)やクロクマについて教えてくれました。

クマの冬眠中の横穴もたくさん見ました。何を食べるか?とかどんな行動をするかとか。

その冬眠の穴の掘り方や土を掘るところを見ているとやっぱりヒグマのような大きいクマでないと出来ないことはあるな、、、と思いました。まるで小型のパワーショベルでないと掘れないくらいのすごい力なんです。

多分私たちの知らない所でヒグマたちは森で穴を掘ったり、腐って倒れかかった木を倒したりして森を整備しているのではないかなと。

私が8月に釧路湿原の特別保護区にトレッキングに行った時ガイドから「ここは昨日ヒグマが来て掘ったんだよね。気が付かなかったけどこの中にスズメバチの巣があってそれを食べたんだよ」と古くて腐った倒木に造られたスズメバチの巣を見ました。トレッキングの道のすぐ横でした。

私は内心「これはヒグマが私たちのためにスズメバチを駆除してくれたんだ」と思いました。

しばらく歩いた先で「ほら見て、あそこに木が倒れてるでしょ?あれは折られていて、あんな木を折れるのは、、、わかるよね?」とガイドは私に言いました。

そう、腐った木が倒れてきたら危ないから、、、ヒグマが倒しておいてくれたのだと思いました。
それへ私のためにやったわけではないと思いますが、ヒグマはそうやって森を作っているのだな、、、と思いました。ツキノワグマ(クロクマ)だって同じだと思います(本州はツキノワグマで北海道にしかヒグマはいません)

秋田県知事はクマが人を襲ったのでとにかく見つけたら速攻撃ち殺せ!と1500万円の特別予算をつけたそうです。私は人を襲うクマはダメとしても、1500万円を銃弾とクマの運搬費に充てるならせめて1000万円分のドングリや栗をヘリコプターで山の色んなところに撒いたらいいと思う(テリトリーがあるので分散させる必要がある)

イノシシがフタ熱に感染したら大変だ!という名目で今は豚熱ワクチンを空中散布しています。各県でそれはやっていますが国の指導だそうです。

とにかく山に餌がなければこれからも餌を探しに里へと降りてくるでしょう。

そしてクマが森にいなくなればますます気候変動は加速するし、人間たちも食べ物を作れなくなります。この辺りは、、、、またいつか。長くなりすぎたのでこの辺で。

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