日本の伝統と文化って奥が深くてかなり面白いことに気づいた

こんにちは。天海 和美です。

私は京都で麹づくりのワークショップに3日間参加しています。東京で大学院時代の恩師の感謝の会が終わってそのまま京都に来ました。なので京都に4日間滞在です。

麹作りに興味を持ったのは発酵食品を作っているうちに麹を作れたらいいんじゃ無いか?という単純な発想でした。

実は他にも理由があって、アイヌの人たちやアメリカ先住民の人たちと交流しているうちに先住民たちが祖先から脈々と受け継がれてきた叡智や伝統が衰退したり、全否定されて、失われてきたのを見てきました。

そして一部の人たちがそれを残して子孫に伝えていこうと努力している姿を見てそんな大切なことだから残して欲しいとずっと思ってきました。

アイヌの人交流しているとたちと「あんたたち日本人は、、、」と日本国内で言われて自分は日本人としてどうなんだろう?と数年前から思うようになりました。また、私は海外に行くことが多いのですが海外でその土地の文化や伝統に触れるたびに自分の日本人としてのアイデンティティについて考えさせられました。

で、段々と日本の文化や伝統を私は子孫に残していけるだろうか?という疑問を持ちました。自然環境も大切ですがそこに生きてきた人々、、、祖先たちが生き抜いてきたから私たちが今こうして生き残ってきた訳で。

そうした伝統を伝えていくことも生き残っていく叡智の一つだろうと思うのです。
例えばお祭りとかね。準備は面倒だけど地域の和や結束を固めたり、言うなればコミュニケーションだと思うし。

日本の伝統ってなんだろう?と時々思っているところに”300余年以上前から伝わる種麹の老舗”というのが目に飛び込んできました。

元々良い麹を探し求めていたのですが、気に入った麹(無農薬栽培の米のもの)とかなかなか手に入りにくいし、今買っているのは九州から送ってもらっているので自分で作れたらいいんじゃないかということが発端で参加しようとすぐに決めました。

麹って味噌、醤油、味醂、甘酒、酢、日本酒などを作る時に欠かせない発酵食品なのです。私は最近、麹にすごく関心があって日常的に塩麹や醤油麹を作っていて、味噌も何度か作ったこともありました。今年は鮭とニシンの飯寿司を作る予定です。

そんな訳で京都の300年以上続いている老舗の麹づくりワークショップとか興味津々でした。そして良い麹を受け継ぐと自分の中にもその麹の菌が棲みつくし手にもおそらく髪の毛とか皮膚とかにも良い麹菌が棲みつくと勝手に想像しました。

だとしたらその空間に行くだけでも価値があるだろうと。

麹作りワークショップに参加していたのは全国からその道のプロフェッショナル海外から来ているプロフェッショナルな方々でした。

家庭の主婦の方もいましたが、それぞれ麹を自分で作っているとか、麹や発酵ワークショップをされていたり、発酵の料理教室をされている方たちばかりでした。

またこだわりの酢の醸造元、醤油の醸造元、養豚から食品加工の会社の経営者や日本酒のコンサルタントとか様々。

なので参加者そのものがかなりマニアックな方達ばかりで、会話がマニアック過ぎてすごい面白かったです。

そして講義の中で麹の種類の話があり、麹菌ってそもそもがカビなんですけど有害な毒を出さないカビなのです。

一般に売られている麹は白ですが、他にもいろんな色の麹菌があって黒麹菌は泡盛、緑とかオレンジは味噌、黄色、紅色、青とか様々な食べられるカビが麹菌として使われており、作るものによってブレンドしたり麹菌を変えるそうです。

黒カビでも毒を出すもの(アフラトキシンは発がん性のある猛毒)も出さないものもあるのです。私は黒カビは全部毒かと思ったら泡盛とか焼酎にはこの黒麹カビを使うらしく、毒を出すものか?出さないものかの判別は遺伝子検査をしないとわからないそうです。でも電子顕微鏡の写真を見たら毒を出すカビ菌って見るから悪そうな顔していました。

そして麹菌も種類によって味が全く変わるらしいです。

味噌は緑色の麹が合うそうですが、ただし作り始めてからの緑カビとは別物なので要注意。麹菌の緑とは別物のカビだそうです。

そして特に日本酒はこの麹の微妙なブレンド具合とか、米の水の浸し方、精米の仕方がまた凄くて、それに蒸しの温度など、とても繊細で、香り、見た目、透明感、味わい、甘さなどホント様々な微調整で作られていることに感銘を受けました。(ただし私はアルコールが飲めない)

日本酒好きの方にはたまらないと思いますね。そしてこれは外国では本当に良い日本酒は作れないと思いました。蔵元に何百年も前から麹菌が棲みついているから。

そして今回初めて、麹づくりには種麹専門のお店があることを初めて知りましたし、こういう職人芸が300年以上も受け継がれて来たことに感動しました。日本の伝統食やものづくりってすごいな~と。

明治以降は顕微鏡ができたり、最近では電子顕微鏡で見たり、遺伝子鑑定が出来るようになり、さらに細かく精密にいろんなことがわかって来たそうです。

そして麹菌も日本酒にしても味噌にしても何となく作っているわけではなくて、とても科学的に研究され、分析、分類されていました。

日本の伝統の味や技と科学の融合でしたね。かなり興味深い話が聞けました。かなり専門的な話が多かったのでオタクな私にとってはワクワク過ぎました。

そんなプロフェッショナルな麹づくりワークショップで良い麹を触ったり作ったりしたので、私の手にも身体にも良い麹菌をすみ付かせてこれから発酵食品を成功させようと目論んでいます。

そしてやや緊張と期待が交差する中、麹づくりが始まりました。

まずは米を蒸すところから。この蒸しがうまくいかないと麹作りは失敗に終わるそうです。その後いくら頑張ってもリカバリーできないそうです。(もしここで失敗したらリゾットか雑炊にするしかないね。

この工程は非常に複雑すぎて難解です。蒸しの状態も微妙でちょっとしたことが成功と失敗の分かれ道になるし、何といっても温度管理が重要でした。

私が今までパンなどを含めて失敗するのは、やはり温度管理がずさんだったと判明。深く反省しました(涙)菌や酵母によって増殖しやすい温度帯が決まっていました。

それとネットでは様々な作り方などの情報がアップされていますが、どれも正解とは言えず、、、いやむしろ間違いで。

結局、目で見ながらその技術やコツを教わったりして自分で練習するしかないのだと痛感しました。今はネットで情報が溢れていてなんでもノウハウが見れますがやはり本物は見ないとわからないですね。

これはスピリチュアルなことも全く同じなのです。実際のエネルギーが大事ですからね。本を読んだり勉強したり頭でっかちになってもね、、、、変わりません。

麹づくりには本当に細かい工程がたくさんあって、お米を水に浸すところから入れると丸々4日掛かります。そして温度管理もしょっちゅう見ながら丸3日間付きっきりで夜中も早朝もチェックしないと出来ませんね。失敗します。

さて、こんな感じである程度のところまで温めた後に熱を一旦、放熱して石室に入れます。


緊張のあまり、、、、力が入り過ぎて、、、、。

麹さんたちに触れて熱を冷ましたり、まとめて発酵しやすくするのですが、なんだかその所作が神事の所作みたいな感じなのです。

講師であり種麹の伝統を受け継いでいる助野さんに理由を質問すると「それ習慣だからやってるの。」っていう答えが所々にあって。

「たぶんその方が、、、ということだと思う。」という予想はあるのですが、それが300年以上続いている老舗の伝統伎なんでしょうね。

で石室ってこんな感じです。温度が一定になるので昔は使っていたそうですが、今はもう助野さんの会社では宇宙船のようなハイテクな装置になっているそうでパワポで見せていただきました。


でもこの石室なんか風情があるでしょ?この中をストーブであっためます。炉みたいなのがあったので昔はここで薪とか炭を燃やして温めたのでしょう。石窯みたいな。

これは石室の中で何工程も重ねた後半です。レンガ積みという工程で麹に風通しを良くしながら温度が上がり過ぎないように発酵させるためです。

いや、、、4日間の工程はなかなかすぐには覚えられそうもないですね。複雑過ぎます。しかし、こんなすごい作業を自分の手で出来て麹の赤ちゃんたちに触れたのは楽しすぎました!もう麹に触っているだけでなんか幸せな気分になりますね。

もう育っていくのが楽し過ぎて。可愛くてしょうがない感じ。何億兆個もきっと麹菌ちゃんたちが分枝して育ったのだと思います。うん生きてるからね。

2日目に石室に午後から入れて翌日のお昼近くまでこの静かな中で育ってもらいました。で、作業工程の合間にマニアックな講義をみっちりと受けて。

空いている時間は参加者の方たちと楽しくおしゃべり。席のお隣になったひろしさんとはいろんな話で盛り上がりました。
ひろしさんは子どもの頃に家族でオーストラリアに移住したそうです。以来ずっとオーストラリアの文化の中で生きて来たのに、東日本大震災を機に生き方が変わったそうです。

それまではお父さんが日本料理店を経営されて自分もオーストラリアで日本食レストランをやっていましたが震災と共に味噌や醤油などの取引先が被災して食材が日本から送ってもらえなくなり、呆然となったそうです。

そこから発酵食品をオーストラリアでもいつでも使えるように発酵調味料を作りはじめたそうです。それともう一つは原発事故。長崎に原爆が落とされた時、発酵食品をたくさん食べていた人たちは被ばくによるガンの発生が抑えられたこと。

でも、そのことだけではなく震災をきっかけに「自分はやっぱり日本人なんだ。」ということに目覚めたそうです。発酵を極めていくうちに日本の文化や伝統の凄さを痛感したそうです。

ひろしさんは「逆に自分が日本人であることに目覚めた」というのは嬉しいな、、、と正直思いました。海外で暮らしているともう日本人であることを否定するかのような人もいます。日本語も話せなくなっていたり。

そして凄いと思ったのは発酵食品を作っているうちに自分がやっていた日本食レストランを辞めてしまったそうです。それまでは京都に留学して日本の創作料理を学びオーストラリアでやっていたそうですが、辞めたと。

その時辞めた理由は詳しく聞かなかったのですが、何となく伝わってくるものがありました。

ひろしさんが言うには10年ほど前は日本は創作料理が流行っていて、自分もおしゃれな創作料理を作ってお店で出していたと。だけど震災があって発酵食品を作っているうちになんか違うと感じてお店を止めたと。

つまり彼が「自分は日本人なんだ。」って目覚めたことと関係あるだろうと。東日本大震災が起きて、それまで持っていた価値観が崩れ多くの人たちが自然に立ち返ったり、自分の人生を見直しました。

創作料理って伝統とは若干違ったり、提供する時も目的も違ったんじゃないかな、、、って。

で、日本の発酵の文化を辿っていくとそれは食べ物と自然の共存であり、生きていくことの本質に触れていくことになるから。だから創作料理ではなくて伝統について学びたくなるし、本物をお客さんに提供したくなる。

でもお客さんがそんな本質的なところまで波動が変わっていないとそれを「美味しいい!!」とわかる人は少ない。

だからと言ってお金の為に自分に嘘をつくながら創作料理を作り続けることは出来なかったのだろう、、、、と0.1秒くらいの速さで感じました。

それでその流れで先住民の話になりました。

私がオーストラリアの先住民アボリジニに会いたくてオーストラリアに行った話とかしたら、彼はアボリジニと交流があって、まだ伝統的な生活や文化が残っているアボリジニの人たちの貴重な写真を見せてくれました。おお~~っ!これぞ本物のアボリジニの顔だわ!

しかし本来のアボリジニの文化や伝統は失われ街にいるアボリジニはすっかりそれを捨ててしまい、守り手はほとんど失われているそうです。

私がアイヌとか縄文の話をしたら彼は元々興味を持っていてめちゃめちゃ詳しかったです。でも実際のアイヌの人たちには会ったことは無いと。

私が非公開のアイヌの儀式のマニアックな写真を見せたりして、もう発酵の話はそっちのけでずっと先住民の話とか縄文の話し、持続可能な地球の未来の話で盛り上がってしまいました。

そう発酵食品つくりや麹づくりって生きることの本質に繋がっていくと思うし五穀豊穣の感謝とか自然と調和することの大事さを身に染みて感じることだと思う。

だって菌は生きているしご機嫌になる温度とか環境とか大事だし、変な化学物質とか嫌いだし。

そんな話をしながら麹ちゃんたちの成長を待ちつつ、、、、ついに!


もくもく~~、ふわふわ~~っ。もうスーパーに売っている麹とは全く別物になりました。わ~い!

可愛い過ぎてずっと眺めたり写真撮ったりして。

最後に出来上がった麹は自分で持ち帰り出来ました。しかし、ひろしさんのはオーストラリア国内に持ち込めないので(植物検疫)ということで私にくださいました~。嬉しい~♪

これはひろしさん流の発酵食品に変身させてあげようと思います。可愛い子だと思うので。

そんな訳でワクワクでマニアックな麹づくりは大成功でした。いや、、、これを家で再現し続けられるかどうかが難しいところです。

ん~~子孫にこの日本の技と伝統を伝えられるのだろうか?

たぶん昔は当たり前におばあちゃん、娘、または嫁へと受け継がれてきたものだと思う。

でも今はインスタントだったり、レトルトだったりコンビニだったりデパ地下だったり偽物の食べ物に変わって来てしまいました。

持続可能な社会ってひとり一人がこうした日常の生活から実行して、いろんなことが自分たちでできるようになるってことも大事だと思うのです。めんどくさい、、、、じゃなくて大事な宝物だよね

こんなこと自分でできるってすごいじゃない?特に日本にはそうした素晴らしいものがある。

今年2月にアラスカに行った時に出会ったアメリカ人女性から「あなたの国には子どもへ受け継ぐことができる素晴らしい文化や伝統があるから羨ましいわ。私たちの国は移民の集まりでそういうものが全くないのがとても残念。

だって私のひいおじいさんとかひいおばあさんがどこから来たのか?どんな文化を持っていたのかだって知らないのよ。

私は娘に何も伝えられないのがとても残念なの。日本が羨ましいわ。あなたはおばあちゃんやお母さんからいろんなこと伝えられているんでしょ?」と言われたのを思い出しました。

そう言われてみれば何気ないことだけど私たち日本人のDNAの中には脈々とそういった文化や伝統がつたわってきているんだろうな~と。

だから日本の伝統とか文化ってやっぱりとても大切だし、それを子孫に残していきたいな、、、、と思いました。

その内、もっと初心者でもできる発酵でできる美味しいもののワークショップを私もしようと思いました。

なぜなら楽しかったから!みんなにもっと楽しんでもらいたいから。

楽しいことはみんなでするともっと楽しくなりますからね。それこそが私たちが作る持続可能な社会=幸せな社会ですからね。

みんなで楽しくて、ハッピーなことをするとそこに平和が生まれます。

身近な平和活動ですね。