ありのままを受け入れる・自然との共生の難しさ:森の子どもたちのマザーツリーになるプロジェクト

こんにちは。天海 和美です。

いよいよ『森の子どもたちのマザーツリーになるプロジェクト』1週間前になりました。ちょっと緊張気味です。

それで2泊3日で鶴居村に下見に行ってきました。

今年は新しい苗木は植林せずに今までの植林したところの整備をします。主に下草刈りです。

木って植えたからといって全てがそのままほっておいて育つわけではないのです。大きく育てるにはそれなりの手間ひまと努力が欠かせません。子どもと一緒ですね。

そして北海道は大自然がそのまま残っている場所でもありますので、実はそれが厄介な状況も生み出します。

植林したのは2017年からで今年で7年目になるのですが。

初年度に植えた苗木たちはあまり大きくなっていないのです。三ヶ所の土地に植えましたが場所によっては苗木の8割以上が死んでしまったところもあります。

理由がわからなくて試行錯誤していました。翌年も植えましたが苗木の被害が酷くて、、、。

私は絶望的になって落ち込みました。昨年の植林が終わってすぐにエゾシカに苗を食い荒らされてしまいました。

また冬場は雪で植林地に入らないので雪が溶けてから見に行くと苗木の多くが無いのです。

斜面だったので雪崩れで流されたり北風で吹き飛ばされたり、雪解け水で流されたりしたのではないか?と言われていました。

そしてどうして良いかわからずに(泣くしか無い)いつまでも凹んでいても埒があかないので友人に相談し、森林再生の専門家である北海道科学大学名誉教授の岡村俊邦先生に来ていただいて現地調査と今後の対策について相談しました。(昨年6月初め)

結局、最大の敵は「エゾシカ」の食害でした。冬の間食べ物が無くなるのでエゾシカは木の枝や幹を食べるそうです。ですので植林した若い苗木は格好のエサになってしまうのです。

もちろん食害されないようにプロテクターを付けていますが夏に枝が伸びてプロテクターから出るとその部分を全部食べられてしまいます。成長して伸びることはできないのです。

冬の間、私は雪の森の中に入ってエゾシカたちを観察しました。わざわざエゾシカを探しに行ったというよりもそこら辺中にいるのです。

このエゾシカたちは雪を掘って熊笹を食べていました。熊笹は真冬の雪の中でも緑色の生命力の強い植物です。

辺り一体の熊笹が食べ尽くされていました。ほじくり返されて草木を食い尽くしていました。

こんな感じね。冬になると北海道のあちらこちらから道東にエゾシカが集まってくると聞きました。たぶんこのエリアは雪が少ないからエサが取りやすいのだと思います。

とにかくエゾシカを見ない日はないくらいすごい数です。

森で出会っても逃げずに木の幹をガリガリ齧って食べていました。

私がずっと観察していると「なに見てんの?」みたいな顔でこっちを見ていました。

エゾシカは秋に交尾をして冬に妊娠中で春に出産します。

ですから冬場の餌のない時はお腹が空くんだろうなぁ、、、と思います。妊婦は食欲旺盛ですから。

で、気持ちはわかるのですが「私たちの植えた森の子どもたち(苗木)は食べないで!!」と思うのですが食べてしまうのです。

昨年は植林をした時にプロテクターが足りなかったので発注しようと3日後に足りない分の本数を数えに行ったら、、、、もう既に食べられた後でした。

は〜っ、、、、ため息、、、。というか涙ですね。

何十万もかけて苗木を買ってみんなで植えてもすぐに食べられてしまうんです。

それも「自然なのかな、、」とふと思ったのですが岡村先生から「エゾシカの食害も自然だからと言っていたら森林再生は不可能だ」と言われました。確かにそうです。

それで対策としての決め手は植林地にエゾシカが入ってこられないように柵で囲むという方法です。これを鹿柵たと呼んでいます。これをやるしか方法はありません。

それで昨年から役場に「鹿作を作らせて欲しい」と交渉しました。費用はこちらで負担するので鹿作をつけて苗木のプロテクターを外したいと。植林地は鶴居村の村有地なので。

プロテクターで囲んでいると苗木にとっても夏場の暑さは苦しくて熱で死んでしまうのもあります。逆に冬は囲われて暖かいと思います。

鹿作を作ればその囲いから苗木は外に出て太陽をたくさん浴びて伸びることもできますし、鹿にも食べられずに済みます。

それで交渉したのですが、、、、

村役場の担当者からは「ノー」の返答でした。何度も何度もお願いしましたが。

そこは釧路湿原国立公園の近くなので水源のためにも森の再生は大切だと思うのです。それは誰もがわかっている。

しかし、そこに7年前に外来種のニセアカシアを産業振興の為に植えたことで国立公園の近くに外来種を植えるなんて何事だ!!と大騒ぎになりニュースにまで出てしまったトラウマが村役場にはあり、そこはもう「触らぬ神に祟りなし」状態になっています。

その外来種は私たちが植えたということに一時なっていて関係各方面から問い合わせの電話が鳴り響きました。誤解ですが。

そんな経緯もあって私たちが最初に植林した場所は鹿作を付けることは出来ないのです(村有地)だから。

強引なことはしたくないですし、周りの状況とも合わせなくてはいけないと思いますし、でも森を作りたい再生したい、未来の子どもたちに美しい地球を残したいという参加者の皆さんや協力者の皆さんの気持ちも形にしたい。

そんな気持ちで私も360日位悶々としてきました。

そうまさに八方塞がり状態。

そんな最中に初回からずっと関わってくれている酪農家の山本さんから電話がかかってきました。私が状況を話すと。

「そうか、、、そういう時って諦めるというか、受け入れるしかないって時もあるんだよね。」と言いました。

「うちも外で牛飼ってるからメスが出産する時そこにキツネが構えて待っていて子宮から顔が出てくる時にそこに噛みついて鼻とか齧って食べるんだよ。だから子牛はすぐに死んでしまって、牧草地で発見するんだよね。

そんな時は特に冬なんかさ〜、アイツらも食べるもん無くて腹すかしてるんだろうな〜って思うんだよね。まぁ、生きるために仕方ないというか。

エゾシカなんかは、群れで来て牧草地の中でうちの牛と並んで牧草食べてるんだよねー。あーアイツらも食ってんのか〜って思うんだけど、仕方ないんだよね。自然ってそういうもんかなと」と言うのです。

えっ何それ?って思いました。牧草って農家さんで言うとトマト畑とかキャベツ畑とかメロン畑とかに相当するものなのでそれが食べられているのに何?そんな緩やかな声、、、と思ったんです。

私の知っている某牧場の人は牧草地にエゾシカが入ったらすぐに猟銃持ってきて撃ち殺す(害獣駆除として許可されている)のです。

私は「えっ?山本さん怒らないの?」って言ったら「いや、もちろんその場で見つけたら追い払うけどね。怒っても仕方ないと言うか、、、自然だから防ぎようがないんだよね」と言うのです。

私はこの時の会話している山本さんにお釈迦様が乗り移っているんじゃないかと思いました。

話の内容というよりもその口調というか、奥深さが、、、、なんかもう悟りの境地って感じでした。

何か起きた時に無駄に抵抗することよりも「ありのまま受け入れる」ということなのだなと。

なんだかこれは本当にお釈迦様がどこかから見ていて私を試しているのかな?と思いました。

この「森の子どもたちのマザーツリーになるプロジェクト」は単に木を植えるという行動だけでなく。

未来の子どもたちに美しい地球を残したい、森を守っていきたい、壊れゆく地球をなんとか食い止めたい、自分のできることを少しでもやりたい、絶望せずに希望を持ちたいそんな純粋な人たちが集まる場でもあるのです。

ひとりで悶々と考えているより同じように思っている仲間たちと出会いたい一緒に活動していきたい!という人たちの集まりでもあるのです。

ま、絶滅危惧種みたいな人たちです。自腹で北海道の人口2500人の村までわざわざ来て木を植えるというレアな人たちです。

でも私はその人たちのことを「森の子どもたちのマザーツリーのファミリー」と呼んでます。宝物の人たちです。

そんなファミリーが年に一度集まって親睦を深める、新しい顔が入って新しい出会い、プロジェクトが生まれる。

それはまさにマザーツリー。

木たちは地下の菌塊を通して世界中でネットワークしているのです。私たちも”愛で結ばれた森の子どもたちのマザーツリーファミリー”なのです。

そんなわけで紆余曲折ありますが来週いよいよプロジェクトの日になります。楽しみだ〜。